人気の職業の1つとなっている薬剤師。女性でも働きやすい職業だったり、労働時間が管理されていることが多い、また年収が高いケースが多いなど、様々な魅力があります。しかし、良いことばかりという訳ではありません。その1つが職場の人間関係です。そこで今回は、薬剤師の人間関係について紹介していきます。薬剤師ならではの悩みもいくつかあるので、薬剤師を目指している薬学部生や、薬剤師としてキャリアをスタートさせる人は、今後の参考にしてみて下さい。
2018年に厚生労働省が行った調査によると、薬剤師の資格を持っている人の58%の人(※)が、医院やクリニックに併設している、調剤薬局で働いているというデータがあります。(2018年12月31日時点、全国の届出「薬剤師数」:311,289 人)その調剤薬局で働く薬剤師では、どのようなことが理由で人間関係がこじれてしまうのか見ていきましょう。
薬剤師というのは、薬局を訪れた人へ医師の処方せんに基づいて薬を渡す仕事。他業種であれば、失敗してしまった時に、他の機会で挽回したり、他のスタッフにサポートしてもらうことで免れることができるかもしれませんが、薬剤師の場合はそうはいきません。薬の種類を間違えてしまうのはもちろん、用量や用法などの説明を間違えてしまうことで、最悪の場合、命を落としてしまうことも考えられます。
そのため、調剤薬局では、常に緊張感が張り詰めていることがほとんど。リラックスしながら仕事をするということは少なく、精神的な余裕がないケースも珍しくありません。このような職場の雰囲気だと、円滑な意思疎通を行ったり、譲ったり、助け合ったりということが難しく、殺伐として人間関係が悪化してしまうことが考えられます。
調剤薬局をはじめ、病院やドラッグストアでも薬剤師が業務を行うのは、限られた数室ということがほとんどです。その中で、2、3名の薬剤師が勤務しているので、気軽に席を外したり、他の部屋へ逃げたりすることが困難。薬剤師の仕事柄、ダブルチェック、トリプルチェックが基本となり、閉鎖的な空間で仕事をすることになります。その結果、ストレスを溜め込むことが多くなり、人間関係の悩みを深くしてしまうことにつながるのです。
大手のドラッグストアや病院であれば、定期的に人事異動が行われますが、個人経営の調剤薬局や病院で勤務する場合は、基本的には人事異動がありません。万が一、職場に苦手な人がいた場合でも転勤などがあれば、「あと半年で転勤だ」「どうも今の職場は自分には合わないから転勤の希望を出そう」などと考えながら業務にあたることができますが、転勤がなければ、5年10年と同じ環境で働き続けることになります。場合によっては、自分が辞めなければ、定年まで働き続けることになるということも珍しくありません。そうなると人間関係が悪化する原因になります。
薬剤師が職場で接することの多い職業は、大きく分けると調剤薬局などの経営者、取りまとめる管理薬剤師、そして事務員の3つ。では、これらの職業の人と薬剤師との間で起きやすい人間関係のトラブルについて見ていきましょう。
大手の調剤薬局やドラッグストアであれば、経営者は本社にいて、顔を合わせる機会がないということもありますが、個人経営や中小企業の調剤薬局では、経営者が職場にいるというケースがほとんど。そうなると、経営者との距離感が近くなり、経営状況や経営方針が見えやすくなるというケースもあります。その考え方が一致していれば問題ないのですが、相違があった場合、共感が持てず不満に思い、ストレスが溜まってしまうこともあります。
管理薬剤師とは、調剤薬局やドラッグストアなどの店舗の責任者のことを言います。主な業務としては、従業員の監督と医療品などの管理。この管理薬剤師とのトラブルも珍しくありません。例えば、ある薬が品切れだった場合、管理薬剤師としては仕入れを管理するため後日、用意するのが良いと判断しましたが、一方で担当した薬剤師が卸業者に確認したところ、当日の配達が可能とのこと。こうなると「薬の管理は私を通してほしいのに」「なぜ当日、渡せる薬をわざわざ後日にしなければならないの?」といった相違が生まれます。このような考え方の違いがトラブルの原因となってしまうことがあるので注意が必要です。
調剤薬局で収入が多いのは、薬剤師。場合によっては2倍ちかい開きがあることもあります。その格差があるにもかかわらず、仕事量が表面上は似たようなことがあるので、事務員が不満を募らせることも。特に薬剤師の入れ替わりが激しい職場に多く見受けられるので注意が必要です。